モネのパレット、秋の色をひらく
光と色が混ざりあう、モネの庭の秋へ。
季節が静かに移ろい、花々が次々と姿を変えていくように――
モネの庭もまた、秋になると新たな表情を見せます。

柔らかな陽光に包まれた花の庭では、ダリアやサルビアが色鮮やかに咲き誇り、
水の庭では、黄金色に染まった樹々が水面に映り込みます。
名残の青い睡蓮が静かに揺れるその光景は、
まるでモネのパレットが再び目覚め、庭そのものが一枚の絵画となる瞬間です。
庭師が語る、秋の色彩
「夏を乗り越えた植物には、圧倒的な高さが生まれます。
花々のボリュームで満ちあふれる景色。
朝夕の温度差から生まれる発色の美しさ――
人の手と植物の力が重なり、この季節が訪れるのです。」

秋の光はやわらかく、花々の陰影を際立たせます。
北川村のモネの庭では、地元の山野草「延命草(えんめいそう)」を用いて、霞がかったような景色を表現しています。

そこに大輪のダリアやジニアが加わることで、深みのある秋の調和が生まれます。
また、種を残すためにあえて残した花々も、午後の斜光や夕暮れの静けさを演出する大切な存在です。
訪れるたびに異なる風景と出会えるのも、この季節ならではの魅力です。

ジヴェルニーから受け継いだ秋の花
北川村のモネの庭では、フランス・ジヴェルニーのモネの家と庭から譲り受けた植物たちが、
秋に見頃を迎えます。
モネが愛した色彩の調和が、この季節の庭の中で静かに息づいています。

メキシコ原産の「クフェア・ミクロペタラ」は、秋の花の庭をあたたかな色で染め上げます。
太陽の光を受けて輝くその花姿は、まるでモネの筆が生み出した一瞬の光の粒のようです。

一方、「サルビア・インボルクラータ」は、透明感のある赤紫の花穂をのばし、クフェアの温かな色と呼応するように咲きます。
ジヴェルニーの庭にも植えられているこの花は、北川村の気候の中で力強く根づき、秋の庭を象徴する存在となりました。
光の記憶
モネが晩年、ジヴェルニーの庭で追い求めたもの――それは、移ろいゆく光そのものでした。

秋の北川村では、その光がまた特別な輝きを放ちます。
早朝の澄んだ空気に包まれた水の庭。
正午の透明な光に照らされる花々。
そして、夕暮れ時に池へと映る茜色の空。
同じ場所でありながら、時間とともに表情を変える庭。
それはまさに、モネが何度も睡蓮を描き続けた理由そのものです。
秋の庭は、絵画を超えて――あなた自身の目で「光を描く」体験へと誘います。